2025.12.25
店舗管理システム

ABC分析とは?在庫管理・売上管理での使い方と手順方法をわかりやすく解説

ABC分析とは?在庫管理・売上管理での使い方と手順方法をわかりやすく解説

在庫管理や店舗運営に対し、「どの商品を優先して管理すべきか」「売り上げや利益に本当に貢献している商品はどれか」を、確かな根拠を持って説明できていますか。

 

商品点数やSKUが増えるにつれ、すべての商品を同じ基準で管理することは難しくなり、感覚や経験に頼った判断では欠品や過剰在庫を招きやすくなります。

 

こうした課題を整理し、商品や在庫に優先順位をつけるための手法として活用されているのが「ABC分析」です。

本記事では、ABC分析の基本から実務での進め方、活用例や注意点をまとめ、在庫管理・店舗運営の改善にどう活かせるかをご紹介します。

近畿システムサービス管理部

近畿システムサービスは、店舗のトータルな提案を行うシステム開発会社です。免税システム、RFIDソリューション、電子署名等、多くの業種システムの開発実績がありますが、特に流通関連のシステムでは多数の実績とノウハウがあります。

ABC分析とは?在庫管理・売上管理で使われる理由

ABC分析とは?在庫管理・売上管理で使われる理由
ABC分析とは、商品や在庫を売上高・コスト・出庫数などの指標をもとに上位順にグループ分けし、管理の重点や優先順位を明確にする一般的な分析方法です。

 

すべての商品を同じ基準で管理するのではなく、特に注視すべき商品と、状況に応じて対応すればよい商品を整理することで、限られた時間や人員を効率よく配分できます。

 

在庫管理や販売管理の現場では、SKU数(Stock Keeping Unit、色・サイズ・仕様違いを含めた管理単位の数)が増えるほど全体像が把握しにくくなり、重要度の高い商品への対応が遅れたり、不要な在庫を抱えたりすることがあります。

 

こうした課題に対して、データを収集・集計し、2割の商品が全体の8割を占める構造を可視化できる点がABC分析の特徴です。

そのため、在庫管理や売上管理を実施するにあたり、判断の根拠を示す手法として多くの企業で利用されています。

 

ABC分析の基本的な考え方(A・B・Cの意味)

ABC分析では、分析対象となる商品や在庫を、重要度に応じてA・B・Cの3つのランクに分類します。

 

Aランク(重要度大) 売り上げや利益への影響が大きく、重点的に管理すべき商品
Bランク(重要度中) 一定の重要性はあるが、Aほどの管理工数は必要ない商品
Cランク(重要度小) 影響度が比較的低く、管理の優先度を下げられる商品

 

このように分類することで、「すべてを完璧に管理しようとする状態」から脱し、重要な商品に集中した在庫管理・店舗運営が可能になります。

 

パレートの法則(80:20の法則)との関係

ABC分析の考え方の背景には、「パレートの法則(80:20の法則)」があります。

全体の成果の大部分が、一部の要素によって生み出されている経験則です。

 

在庫管理や売上管理に置き換えると、「売り上げの多くは、全商品の中の一部が生み出している」ケースが多く見られます。

ABC分析は、この構造を可視化し、どの商品が経営や店舗運営にとって重要なのかを把握するための実務的な手段といえます。

 

理論ではなく、現場の判断や改善につなげるための分析手法である点が、ABC分析が在庫管理や店舗運営で広く使われている理由です。

ABC分析の手順|実務で使える進め方を解説

ABC分析の手順|実務で使える進め方を解説
ABC分析は、計算そのものよりも「何を、どの期間で、どのような目的で分類するか」を先に決めることが重要です。

曖昧なまま進めると、A・B・Cに分けても現場の判断につながらず、「やっただけ」で終わってしまいます。

 

そこで下記では、在庫管理・売上管理の実務で使えるように、ABC分析を4ステップに分けて解説します。

まずは全体像として、以下の流れで進めましょう。

  1. 分析対象と評価指標を決める
  2. データを集計し、構成比を算出する
  3. 累積構成比を出し、A・B・Cに分類する
  4. パレート図で可視化する

ステップ1|分析対象と評価指標を決める

ABC分析を進める際は、まず分析対象と評価指標の把握が重要です。

曖昧に実施すると、A・B・Cに分類できても、在庫管理や店舗運営の判断に活かしにくくなります。

 

在庫管理でABC分析を行う場合、分析対象は商品(SKU)単位とするのが一般的です。

商品ごとに売上高や出庫状況を整理することで、欠品リスクの高い商品や在庫過多の商品が把握しやすくなります。

 

一方で、目的によってはカテゴリ単位や店舗単位で分析したほうが判断しやすいときもあります。

 

評価指標には、売上高・粗利・出庫数・在庫金額などがあり、改善したい内容に応じて使い分けるのが基本です。

欠品対策を重視する場合は出庫数、利益改善を目的とする場合は粗利など、目的と指標を一致させます。

 

併せて、分析期間も事前に設定しておきましょう。

短すぎる期間は一時的な変動の影響を受けやすく、反対に長すぎると現在の課題が見えにくくなります。

まずは直近数ヵ月など、定期的に見直しやすい期間を設定するのが現実的です。

 

ステップ2|データを集計し、構成比を算出する

次に、対象となる商品やSKUごとに、選定した評価指標の数値を一覧にします。

Excelを利用する場合は、商品名(または商品コード)と売上高や出庫数を表にまとめるだけで問題ありません。

 

一覧化した数値をもとに合計を算出し、各商品が全体に占める割合を計算します。

この割合が構成比で、商品ごとの影響度や重要度を把握するための基準になります。

 

ただし、今の段階では、まだA・B・Cに分類する必要はありません。

まずは全体に対する位置づけを数値で整理し、どの商品が上位に位置するのかをはっきりさせるのが目的です。

 

ステップ3|累積構成比を出し、A・B・Cに分類する

構成比を算出したら、次は累積構成比を求め、商品をA・B・Cの3つに分類します。

ここで行う作業は、構成比の高い順に商品を並べ替え、上から順に数値を足し合わせていくことです。

 

一般的な分類の目安は、次の通りです。

Aランク:累積構成比 約70%まで

Bランク:累積構成比 約70〜90%

Cランク:累積構成比 約90%以降

このように区分することで、全体に大きな影響を与えている商品と、管理の優先度を下げられる商品が明確になります。

なお、これらの割合はあくまで目安で、業態や商品特性に応じて柔軟に調整して問題ありません。

 

ステップ4|パレート図で可視化する【図表で確認】

A・B・Cに分類した結果は、パレート図を使って可視化すると、全体像を直感的に把握できます。

パレート図は、商品を構成比の高い順に並べた棒グラフと、累積構成比を示す折れ線グラフを組み合わせたものです。

 

<データの例>

  • 商品A(定番飲料):50万円
  • 商品B(人気菓子):30万円
  • 商品C(PB商品):20万円
  • 商品D(季節商品):12万円
  • 商品E(雑貨):8万円
  • 商品F(スポット商品):5万円
  • 商品G(旧モデル):3万円
  • 合計:128万円

 
パレート図<データの例>

※図は自社作成

 

上の図を見ると、商品A・Bなど、一部の商品が売上全体の大きな割合を占めていることがわかります。

一方で、C以降の商品は点数が多くても、売り上げへの影響は限定的であることが視覚的に確認できます。

 

このように、どの商品を重点的に管理すべきか、どこから先は管理の優先度を下げられるのかを一目で判断できる点が、パレート図の特徴です。

 

なお、パレート図自体はExcelでも簡単に作成できますが、重要なのはグラフを作ることではありません。

分析結果を関係者と共有し、発注量の見直しや在庫調整など、次のアクションにつなげることが、ABC分析とパレート図を活用する本来の目的です。

ABC分析の活用例|店舗・業務別ケーススタディ

ABC分析の活用例|店舗・業務別ケーススタディ
ABC分析は、やり方や方法を理解するだけでは十分とはいえません。

実際の店舗や業務に事例を活かすことで、初めてビジネス上の課題や改善に役立ちます。

ここでは、店舗規模や業態ごとに、ABC分析がどのように活用できるのかを具体的にご紹介します。

 

小規模店舗(単店舗・SKU数が少ないケース)

商品数が比較的少ない単店舗では、ABC分析を行うことで「感覚でわかっているつもりだった売れ筋」を、数字で整理できます。

 

Aランク商品が判明すれば、欠品しやすい商品への補充判断が早くなり、反対にCランク商品は仕入量を抑えるなど、在庫の持ち方を見直しやすくなります。

 

「何となく売れている」から一歩進み、重点的に管理すべき商品の可視化が主な効果です。

 

複数店舗(SKU数・拠点が増えているケース)

複数店舗を展開している場合、店舗ごとに売れ筋や在庫の動きが異なることは珍しくありません。

来店する顧客層や立地条件の違いにより、同じ商品でも販売状況に差が生じるためです。

 

ABC分析を店舗別に実施することで、「この店舗では重要な商品」「この店舗では動きが鈍い商品」がわかります。

 

その結果、店舗ごとの発注基準を施策として見直したり、過剰在庫や欠品の偏りを調整したりと判断がしやすくなります。

全店舗一律の管理から脱却できる点は、複数店舗運営のメリットです。

 

量販店・多品種展開(SKU数が多いケース)

SKU数が多い業態では、すべての商品を同じ粒度で管理すること自体が現実的ではありません。

ABC分析の活用で、Aランク商品に管理リソースを集中させ、B・Cランク商品は基準を決めて効率的に運用するなど、メリハリのある在庫管理が可能になります。

 

人の判断が必要な商品と、仕組みで回せる商品を切り分けることで、現場の負担を減らしながら、重要な商品への対応精度を高められます。

 

ABC分析を成功させるための注意点

ABC分析を成功させるための注意点
ABC分析はシンプルな方法ですが、進め方を誤ると「結果は出たが、使えない分析」になりがちです。ここでは、実務でつまずきやすいポイントや注意すべき点をまとめました。

 

分析期間の設定ミス

分析期間が適切でないと、結果が実態とズレてしまいます。

期間が短すぎると、一時的な売り上げの変動やキャンペーンの影響を強く受けやすく、逆に長すぎると現在の課題が見えにくくなります。

 

まずは、現場で見直しやすい直近数ヵ月を基準に設定し、必要に応じて期間を分けて比較するなど、柔軟に考慮することが重要です。

 

季節商品・期間限定商品の扱い

季節商品や期間限定商品を他の商品と同様の基準で扱うと、AランクやCランクに極端に分類されることがあります。

結果的に、実際の管理方針と分析結果が合わなくなるかもしれません。

 

こうした商品には、別枠で管理する、補足情報として扱うなど、分析結果をそのまま鵜呑みにしない工夫が必要です。

 

数字だけで判断しない

ABC分析はあくまで判断をサポートするための手段です。

数値上はCランクであっても、代替がきかない商品や今後の販売戦略上重要な商品が含まれることもあります。

 

分析結果は参考情報として捉え、現場の知見やツール、戦略と組み合わせて判断することで、ABC分析は初めて意味を持ちます。

 

ABC分析と他の分析手法との違い

ABC分析と他の分析手法との違い
在庫管理や店舗運営では、ABC分析以外にもさまざまな分析手法が使われます。

ただし、すべてを最初から使い分ける必要はありません。まずは、それぞれの役割の違いを理解しておくことが大切です。

 

ABC分析とパレート分析の違い

ABC分析と混同されやすい手法に、パレート分析があります。

パレート分析は、データを大きい順に並べ、全体に対する影響度を可視化する考え方そのものを指します。

一方、ABC分析は、結果をもとにA・B・Cの管理区分を設定し、実務の判断に落とし込む手法です。

 

項目 ABC分析 パレート分析
目的 重要度別に分類し、管理の優先順位を決める 影響度が大きい要因を把握する
考え方 構成比・累積構成比をもとにA・B・Cに分類 構成比の高い順に並べて偏りを見る
アウトプット A・B・Cの分類結果 パレート図
活用シーン 在庫管理・売上管理・顧客管理 課題分析・原因特定
関係性 実務で使う管理手法 ABC分析を補助する分析手法

パレート分析は「構造を把握するための考え方」、ABC分析は「優先順位を決めて管理に活かすための手法」と捉えるとわかりやすいでしょう。

 

XYZ分析・FSN分析との組み合わせ

在庫管理をさらに細かく見ていく場合、需要予測の為のXYZ分析や、在庫商品の動きに基づくFSN分析のような手法と組み合わせて使われることがあります。

需要の安定性や在庫の動き方など、別の視点から商品を分類する手法で、ABC分析を補完する役割を持ちます。

 

ただし、これらの分析は運用負荷も高くなりやすいため、まずはABC分析で全体像と優先順位を整理し、その上で必要に応じて検討するのが現実的です。

 

システムを使ったABC分析が必要になるタイミング

システムを使ったABC分析が必要になるタイミングABC分析は、Excelを使って手軽に始められる点がメリットです。実際、小規模な店舗やSKU数が限られている段階であれば、Excel管理でも十分に効果を感じられるでしょう。

 

一方で、運用を続けていく中で、次のような場面が増えてきた場合は、Excelだけでの管理に限界が見え始めます。

 

分析頻度が上がってきたとき

ABC分析を一度きりではなく、定期的に見直すようになると、毎回データを収集・集計し直す作業が負担になります。

さらに、月次や週次で分析を実施すれば、集計や転記の手間、ヒューマンエラーのリスクも無視できません。

 

分析を特別な作業ではなく、日常業務として回すためには、集計から分類までを効率化できる仕組みが必要になります。

 

複数店舗・SKU管理が必要になったとき

店舗数やSKU数が増えると、管理するデータは一気に増加します。

店舗別・商品別にABC分析を行おうとすると、Excelではファイル管理が煩雑になり、全体像を把握しにくくなりがちです。

 

システムを使えば、複数店舗や大量の商品データを一元管理した上で、条件を切り替えながら分析できます。

その結果、現場や管理部門の負担を抑えつつ、業務全体の最適化につなげられるでしょう。

 

在庫・売上・原価データを横断して見たいとき

Excel管理では、在庫データ、売上データ、原価データが別々に管理されているケースも多く、横断的に分析するには手間がかかります。

そのため、売り上げは高いが利益が出ていない商品や、在庫を持ちすぎている商品に気づくのが遅くなるかもしれません。

 

在庫・売上・原価データをまとめて扱える環境があれば、ABC分析の結果をより実態に近い形で判断に活かせます。

 

システム導入のメリット・デメリットについてはこちらのコラムで詳しく解説しておりますのでご覧ください。

>店舗管理システム導入のメリット・デメリットとは

 

まとめ|KSSの店舗管理システムで実現できるABC分析

ABC分析は、在庫管理や店舗運営に対して、「何を優先して管理すべきか」を決めるための実践的な分析手法です。

売り上げや在庫データをもとに商品を分類することで、欠品対策や在庫削減、利益改善などの判断を、感覚ではなく数字で行えるようになるでしょう。

 

一方で、ExcelによるABC分析は、分析回数や管理対象が増えるほど、集計作業やデータ管理の負担が大きくなりやすい側面があります。

特に、複数店舗を運営している場合や、在庫・売り上げ・原価を横断して分析したい場合には、仕組みとして継続できる環境が必要です。

 

近畿システムサービス(KSS)の店舗管理システムクラウド型店舗管理は、在庫・売り上げ・原価などのデータを一元管理する機能を備え、日々の業務の中でABC分析を活用できる環境を整えます。

分析を一度きりの作業で終わらせず、継続的な改善につなげたいと考えている場合、システムによる管理はおすすめの選択肢です。

 

ABC分析を、現場で使える判断材料として定着させたい方は、お問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。

 

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